過剰な設備投資

 業績が絶好調の経営者には心の隙が生まれやすいのか、その瞬間を待ち構えるようにして魔物が襲うのか冗談抜きでそう思うことがある。

 「なぜこんな設備投資をしてしまったの???」思わずそうつぶやきたくなるような、過剰な設備投資をしている企業にまたも遭遇した。またも、ということは過去にも何社かあったということだ。

 いずれも、米国製だのヨーロッパ製だの、ものすごい製造能力を備えた機械設備で、日本国内では他に類を見ないくらいの素晴らしいものだという。経営コンサルタントとして初めて会社を訪れると、経営者は鼻高々と設備概要を自慢気に説明し始める。
 ところがどっこい、時の経過とともに実際に内実をいろいろと調べていくと、この国内でも稀有な立派な製造設備こそがその企業のアキレス腱になっていることがあるのだ。

 いずれの製造設備も短時間で大量に、かつ低コストで生産できる能力を誇っていて、ガリバー型と言うのかとにかくその規模には圧倒される。ただ、昨今はやりの多品種少量生産は、どちらかというと苦手とする仕様となっている。
 だから、単品種を大量に生産する場合には、素晴らしいコスト競争力を発揮するんだけど、それ以外ではそんなに出番がない。
 結果として、自慢の設備の稼動率はものすごく低いか、ものすごくたくさん作りすぎて製品在庫の山を築いているか、どちらかということになる。

 普通の感覚であれば、こんな生産設備だったら絶対に投資しないだろう。もちろん、投資は将来を見据えて行うものだから、必ず成功するとは限らないけれど、やれ多品種少量だ、短納期対応だ、と言われる昨今、何でよりによってこんな単細胞的生産ラインに投資してしまったんだろう。
 どうせ設備投資するなら、多品種少量対応ラインでしょ!経営者は何を考えとんじゃい!、と後から批判することは簡単だけれど、もうこれは賢明な経営者に魔が差したとしか言いようがない(理由がわからない)。

 ただいずれも共通しているのは、著しいワンマン経営の企業であること、そして業績は破竹の勢いの絶頂期である、という点だ。まあ、業績絶好調の時に機械屋さんのセールストークにうまいこと乗せられてしまって財布のヒモがゆるんでしまった、ということなのか。
 それでも、なぜ「こんなもの」買ってしまったの?という疑問は解消されない。バブル期に高値でゴルフの会員権や値上りを期待して山林を買ったのは、「欲に目がくらんだ」で説明がつくけれど、本質的に投資の動機が違うように思える。やはり理屈だけでは説明できない、経営者に魔が差す、ということが本当にあるのかと思えてくる。

 周囲に社長の暴走をお諌めする家臣がいない経営者の方は、心の隙を魔物がねらっていることに注意した方がいいかもしれない。

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